夫婦の合意があれば「離婚に必要な理由」は要りません
離婚とは夫婦の合意があれば成立します。夫婦の話し合いにより両者が合意を得ることで離婚することができるのです。これを協議離婚といいます。夫婦の合意があれば、特に「離婚に必要な理由」は要りません。
つまり、結婚とは契約の一種なので、契約の当事者が合意すれば契約を解除することができるのと同じ考え方です。具体的な手続方法としては、離婚届に双方の記名押印のうえ市町村役場に提出すれば解決するのです。
しかし、夫婦の一方が離婚に応じないため合意を得ることができないと、家庭裁判所での調停により解決を目指すことになります。
裁判で離婚手続を行うには法律で定めた離婚原因が必要です
夫婦の話し合いにより離婚を成立させるためには、夫婦の合意が必要なため、一方が離婚に応じない場合には、離婚が成立しません。そこで、合意が得られなければ調停により合意を目指すのです。
しかし、調停でも合意に至らない場合には、最終的に裁判により離婚手続を行うのです。なお、夫婦の話し合いにより離婚を決めた場合には、特に離婚の原因を明らかにする必要はないのですが、裁判での解決をはかる場合には法律で定めた「離婚原因」が必要になります。
離婚の際に必要な「離婚原因」とは
- 浮気や不倫のような不貞行為
- 悪意の遺棄(助け合いをしない、生活費を渡さない)
- 3年以生死がわからない
- 強度の精神疾患のため回復が見込めない
- 婚姻を継続できない重大な原因がある
浮気や不倫のような不貞行為
不貞行為を離婚原因とするためには、不貞行為があったことを証明しなければなりません。不貞行為の意味は、「夫婦以外の者と性的関係を持つ」ということなので、性的関係があったことを証明しなければならないのです。したがって、「二人で食事をしていた」や「メールの交信があった」程度の証明では弱いでしょう。
ホテルに出入りする現場を押さえた写真のような、明らかに性的関係があったことの証明ができる証拠を提出する必要があるのです。一般的に性的関係の証明には、興信所などに調査を依頼するケースが多いようです。
悪意の遺棄(助け合いをしない、生活費を渡さない)
悪意の遺棄とは、夫婦が助け合いをしないことです。つまり、勝手に家を出たり、逆に相手を家から追い出すような行為を行うことになります。また、生活費を渡さない行為も含まれます。したがって、悪意の遺棄では、相手に精神的な苦痛を与えることになるので、離婚原因と認められるのです。
なお、家を空けることに正当な理由がある場合には、悪意の遺棄は認められません。たとえば、仕事のための単身赴任や出産のための里帰りです。
3年以生死がわからない
たとえば、行方不明になり3年が経過したような場合には離婚原因と認められます。行方不明の原因は、さまざまでしょう。亡くなっているかもしれませんし、愛人と駆け落ちしたのかもしれません。しかし、3年にも渡って夫婦としての生活ができていないのは離婚原因に該当するという考え方です。なお、3年以上の行方不明を離婚原因とするためには、警察へ捜索願を提出し、「捜索願受理証明」を受けておく必要があります。
強度の精神疾患のため回復が見込めない
原則として、民法では、夫婦の一方が病気になった場合、それぞれが助け合い協力しなければならないと定めています。しかし、例外として、その病気の程度により、強度の精神病・総合失調症・躁うつ病・認知症の場合には他方にかかる負担が大きいため、離婚原因として認めています。
法律も生活を破綻させるような負担を無理強いすることはできないからです。しかし、離婚原因の判断は、あくまで病気の程度によります。病気の程度や症状に改善の見込みがある場合などは、婚姻の継続が相当であるとして、離婚原因と認めないケースもあります。
なお、認知症などの場合には、本人が離婚等の判断を行うことが困難なため、事前に「成年後見人」の申し立てを行わなければならない場合があります。
婚姻を継続できない重大な原因がある
婚姻を継続することが難しい理由には、さまざまなものがあります。したがって、家庭裁判所では、婚姻を継続することが難しい理由については、その都度判断することになります。ただし、明確な基準がないため、裁判官の個人的な考え方が強く反映される場合があるので注意しなければなりません。