家庭裁判所で仲介を受ける調停離婚
裁判を提起する前には調停が必要です
夫婦間の問題や家族間の問題については、一般的に法律の行使がなじまないケースが多いため、離婚訴訟を起こすには、まず家庭裁判所に「家事調停」を申し立てることになります。
つまり、最初に調停を行い、調停で合意できない場合に裁判を起こすという順番になるのです。
裁判までには一定の順序があります
裁判所で調停という「調停委員会」が夫婦間を仲介して話し合う
調停を利用しても夫婦間に合意が得られない場合
家庭裁判所において離婚訴訟を提起します
調停から裁判へという順序で行うのです。
調停離婚の具体的な内容
夫婦間の話し合いで合意が得られない場合に利用します
夫婦間の話し合いにより合意が得られると協議離婚として離婚届を提出して離婚が成立します。しかし、合意が得られない場合には、家庭裁判所において調停というシステムを利用できます。
調停委員という第三者が夫婦間を仲介して話し合いの合意を目指すことになります。第三者が仲介を行うため客観的な判断やアドバイスを受けることができ、冷静な雰囲気のなかでの話し合いが期待できるのです。
つまり、夫婦間のみの話し合いでは、お互いに冷静さを欠くため合意が得られない場合が多いので、夫婦間に調停委員というクッションを挟むのです。
調停の具体的な流れは、家庭裁判所に調停の申し立てを行うことにより1カ月程度で初回の調停が開かれることになります。その後も1カ月に1度くらいのペースで調停が開かれます。
調停により合意が得られると合意内容が「調停調書」という書類に記載されます。調停には、合意することを強制するような拘束力はないのですが、合意により作成した調停調書は、裁判の判決のような拘束力を持ちます。そして、離婚届に調停調書等を添付して市町村役場に提出するのです。
調停離婚の具体的な手続き方法
家庭裁判所に対して調停の申し立てを行います
調停については、夫婦の一方からの申し立てにより行えます。申し立ての方法は、「夫婦関係事件調停申立書」という書面で行うことも、口頭で行うこともできます。
夫婦関係事件調停申立書の記載欄には、慰謝料・財産分与・養育費・親権者の記載が必要なため、金額等の記載については、前もって弁護士に相談しておくことをお勧めします。
なぜなら、夫婦関係事件調停申立書に記載された金額が調停における離婚条件の調整のベースになるからです。
調停の開始については調停期日の指定があります
調停の申し立ての受理後、家庭裁判所から1~2週間で夫婦双方に第1回目調停期日の記載された呼び出し状が送られてきます。
また、調停期日に出頭できないときには、事前に家庭裁判所に対して期日変更申請書の提出が必要になります。
なお、特別な理由なく出頭しない場合には5万円以下の過料に処せられるので注意してください。
調停の進め方
調停とは、調停委員が夫婦それぞれから話の内容を確認し、合意のために離婚条件を調整するのが目的です。
そのため、内容確認に必要な書面等の証拠の提出を求められるケースもあります。一般的に夫婦は別々の部屋で待機します。調停の際も同じく夫婦別々に入室することになります。
また、夫婦が顔を合わせないように調停の開始時間や終了時間を夫婦で変えるなどの配慮もなされています。なお、調停の開催については、おおよそ月1度のペースで複数回行われます。
調停が成立した場合または成立しない場合の手続き
慰謝料・財産分与・養育費・親権者などの離婚条件について合意が得られ、離婚の意思について確認が取れると調停離婚が成立します。離婚条件については調停調書に記載され、その内容は裁判による判決と同じように法的拘束力を持つので、原則として、後日、不服を申し立てるようなことはできません。
したがって、調停調書の作成には十分な注意を払う必要があります。法的拘束力を持つということは、記載どおりの支払い等ができない場合には、給与や財産の差し押さえ等の強制執行が行われるのです。また、調停離婚の際の離婚届の提出方法は、調停の申立人が調停成立の日から10日以内に市町村役場に提出します。
添付物として調停調書の謄本や場合によっては戸籍謄本が必要になることもあります。調停離婚の場合、離婚届に双方の押印は不要です。なお、調停成立の日から10日を経ても申立人が離婚届を提出しない場合は、相手方が提出できることになります。
調停による話し合いの合意が困難であると判断されると調停不成立となり調停は終了し、不成立に対する不服の申し立てはできません。また、申立人は、理由に関わらず調停を取り下げることができますが、相手方から取り下げることはできません。
調停離婚の際に気をつけるポイント
調停とは、調停委員という第三者が中立の立場で夫と妻の間に入って、互いの主張を聞き、アドバイスを行ったり、時には相手方を説得してくれたりします。したがって、調停の際に重要なのは、調停委員に自己の主張をしっかりと伝えることなのです。
つまり、調停には交渉力もポイントのひとつになるのです。なぜなら、調停委員に対して、どの程度の主張ができるかが、離婚条件の内容を左右しかねないからです。納得のできない離婚条件でも、調停が成立してしまうと法的に拘束されてしまいます。後から後悔しても手遅れになってしまうのです。やはり、あらかじめ法的な知識に基づいたサポートを受けたいものです。
事前に弁護士に相談することで、調停委員に対して自信を持って主張することができるはずです。